【#半導体ニュース深掘り】ノリタケ、GaNウエハー用研磨パッドの開発に成功

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ニュース概要

GaNウエハー用研磨パッドの開発に成功 ~高速通信 (5G・6G) 向け半導体の生産性向上に貢献~ | ノリタケ株式会社

 ノリタケ株式会社 (以下 ノリタケ) は2025年8月20日、高速通信向けなどに用いられる窒化ガリウム (GaN) ウエハー用の研磨パッドの開発に成功したと発表。GaNウエハー研磨の加工時間短縮と、寿命延長を達成し、産業廃棄物の低減に貢献するとした。

出典:ノリタケ株式会社, GaNウエハー用研磨パッドの開発に成功 ~高速通信 (5G・6G) 向け半導体の生産性向上に貢献~ | ノリタケ株式会社

ニュース深掘り

以下のポイントに沿って深掘りしていきます。

  1. GaNウェーハとは?
  2. 半導体の研磨工程(CMP)とは?
  3. GaNウェーハ製造における課題
  4. ノリタケの課題解決

GaNウェーハとは?

 窒化ガリウム (GaN) とは、ガリウム(Ga)と窒素(N)の化合物です。2種類以上の元素が結合してできる半導体であることから、化合物半導体に分類されています。

 半導体の用途は様々ですが、特にパワーデバイスは、鉄道や自動車等の車両、冷蔵庫やエアコンなどの家庭電化製品、パソコンやスマートフォン等の情報通信機器、発電・送電システム等、様々な分野で応用されています。しかし、パワーデバイス素材の中でもシリコン(Si)結晶基板を使ったパワーデバイスでの特性改善が限界に近づきつつあります。特に、通信規格5Gをはじめとする高速通信では、高い周波数の電波が使用されています。そのため、基地局やデータセンターで用いられる通信デバイスでは、高周波に対して高速で安定した動作が求められています。

 そんな中GaNは、バンドギャップはSiの約3倍の大きさで、絶縁破壊電界は約11倍という材料特性を持っています[1]。このため、GaNデバイスはSiデバイスと比べて、ドリフト層の厚さを薄くでき、熱損失の原因となるオン抵抗を小さくできる。また、バンドギャップが大きく、飽和電子速度も大きいことから、高出力かつ高速の電子デバイスへの応用が期待されている[2]。

出典:住友電気工業株式会社, “無線通信用GaN HEMTの開発”, SEIテクニカルレビュー, 第192号,2018年1月|リンク
出典:経済産業省, 半導体・デジタル産業戦略の現状と今後
出典:特許庁, 令和 3 年度特許出願技術動向調査 - GaN パワーデバイス

【出典】
[1]特許庁, 令和 3 年度特許出願技術動向調査 - GaN パワーデバイス
[2]住友電気工業株式会社, “無線通信用GaN HEMTの開発”, SEIテクニカルレビュー, 第192号,2018年1月|リンク

半導体の研磨工程(CMP)とは?

 CMPとは”Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)”の略で、研磨材の入った薬品(chemical)と砥石で機械的(mechanical)にウェーハの表面を平らに磨く(polishing)技術です。半導体製造工程ではシリコンウェーハ製造工程・配線工程・素子分離工程など複数の工程で平坦化を行う必要があり、これらの工程でCMP技術が使用される。
 CMPは以下の要素で構成されている。

図1 CMP装置の概略 出典:AGC

研磨パッド
 メタルや酸化膜を研磨する際に研磨材粒子(砥粒)を保持し、加工物の表面に作用させるパーツ。主に硬質発泡タイプがウェーハ表面の研磨に用いられる。
スラリー
 研磨剤粒子の分散液。CMPスラリーには酸やアルカリ成分を持つ水溶液にアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)などの微細砥粒を混合分散したものが用いられる。平坦化の対象*によって様々なスラリーが使い分けられる。
*ウェーハ用、ウェーハラッピング用、酸化膜用、poly-Si用、STI用、W用、Cu用、Cuバリア用など
コンディショナー
 平坦化加工の進行に伴って発生する目詰まり現象を抑制するために、パッドの表面部分を削り取って目立てするためのパーツ。主にダイヤモンドの砥石が使用される。
目詰まり現象:CMPパッドの表面の小さな孔に異物(加工屑や反応生成物)が詰まる現象。初期状態と異なった態様になるため、研磨レートの低下やスクラッチ発生などによるプロセスへの悪影響が生じる。

GaNウェーハ製造における課題

 GaNは非常に硬く脆い素材のため、研磨加工が難しく、従来の弱アルカリ性条件下でのCMP法では研磨加工に相当な時間が費やされていた。GaNウエハーを短時間で研磨するために、強酸性領域 (pH1~2) での研磨が求められているが、通常の研磨パッドでは、強酸性領域での使用に耐えられず劣化してしまう。

【出典・参考資料】
WO2015152021A1 – GaN単結晶材料の研磨加工方法 – Google Patents

ノリタケの課題解決

① 研磨速度を向上させ加工時間を短縮
耐酸性が高い樹脂を用いることで、強酸性領域での使用を可能にした結果、研磨速度を速め、加工時間の短縮を実現。

② 研磨パッドの寿命向上
研磨剤 (無機物) を耐酸性樹脂 (有機物) により内包したことで、パッドの摩耗を低減。また、パッドが摩耗しても表面を削ることで研磨性能を持続させることにより、パッドの寿命を大幅に延長。エポキシまたは PES 樹脂に研磨粒子を固定。有孔構造により粒子を包含し、高価な粒子の消費を抑制。

出典:GaNウエハー用研磨パッドの開発に成功 ~高速通信 (5G・6G) 向け半導体の生産性向上に貢献~ | ノリタケ株式会社

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