【TSMC】熊本新工場・JASMについてまとめ

半導体企業研究

はじめに

 今回は、台湾の半導体受託製造大手のTSMCが熊本に建設した工場の運営を担う子会社「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社」通称「JASM」の基本情報をまとめました。親会社であるTSMCやJASMが設立された経緯、採用情報など、一般に公開されている情報をこの記事一つに集約しました。客観的事実に基づいた記事および文献の内容をまとめたものになっていますので、私個人の主観的な意見は一切述べていません。ただし、複数の客観的事実からの推察が一部含まれる場合があります。
 ぜひ最後までご覧ください!!

If you want to read the English version, please see the following article.

【TSMC】New Fab in Japan, "Japan Advanced Semiconductor Manufacturing Corporation, JASM"
IntroductionThis article provides basic information on "Japan Advanced Semiconductor Manufacturing Corporation", commonl...

JASMの基本情報

企業サイト

JASM | Japan Advanced Semiconductor Manufacturing

会社概要

会社名  :Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社
フリガナ :ジャパンアドバンストセミコンダクターマニュファクチャリング
本社所在地:〒869-1102 熊本県菊池郡菊陽町大字原水4106-1
設立   :2021年12月10日
代表者  :廖 永 豪
事業内容 :ファンドリー、半導体素子の製造・販売など
従業員数 :不明(単独)、世界規模 56,831人 (2020年)
資本金  :28億7875万円
主要株主 :台湾積体電路製造(TSMC)、ソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、トヨタ自動車

JASMの概要

 以下は各就活サイトや募集要項に記載されているJASMについての紹介文です。

JASMについて

「Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社」(JASM)は、専業ICファウンドリビジネスモデルの先駆者であるTaiwan Semiconductor Manufacturing Company Limited(TSMC)が過半数を出資し、熊本県に設立した子会社です。TSMCにとって日本初となる工場で、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社、株式会社デンソー、トヨタ自動車株式会社が少数株主として参画します。半導体に対する世界的に旺盛な需要に対応することを目的に、JASM両工場合計の月間生産能力は100,000枚(300㎜ウェーハ換算)以上となる見込みで、自動車、産業、民生、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)用途向けに40nm、22/28nm、12/16nm、6/7nmプロセス技術による製造を担う予定です。

出典:JASM | Japan Advanced Semiconductor Manufacturing

 上記の内容を箇条書きでまとめると、以下のようになります。

  • 計画発表:2021年11月
  • JASM の株主:
    TSMC(過半数株主)
    ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
    株式会社デンソー
    トヨタ自動車株式会社
  • 主要製品:ロジック半導体(40nm、22/28nm、12/16nm、6/7nmプロセス)
  • 産業用途:自動車、産業、民生、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)
  • 生産能力:10 万枚/月(12インチ, 300 mm ウェーハ換算)
  • 稼働計画(第一工場):
    2022年4月-建設開始
    2023年9月-竣工予定(装置搬入開始)
    2024年末-生産開始

 また、TSMCジャパンの代表取締役社長を務める小野寺誠氏は、JASMについて以下のようにコメントしています。

台湾以外の海外工場は米国、中国、シンガポールにあり、日本は4カ国目となる。22/28nmのようなレガシーノードで始まる新規投資で建設することは異例で、300mmラインをジョイントベンチャー(ソニーが少額出資)として運営することも初めての試みだ。熊本新工場だけでなく、日本への投資案件は近年増えており、東京大学との協業やみなとみらい地区でのデザインセンター開設、そしてつくばでの先端パッケージ開発の拠点設立などがあり、開発・生産を行う重要地域としての色合いも強まっている。

出典:”特別インタビュー TSMCジャパン(株) 代表取締役社長 小野寺誠氏”, 電子デバイス産業新聞 より

 また、JASMの代表取締役社長を務める堀田祐一氏は、装置や材料の日本国内での調達率50%を目標に掲げているほか、電力は再生可能エネルギーを100%使用・使用した地下水と同量を涵養するとしています。

親会社のTSMCについて

会社概要

会社名  :台湾積体電路製造股份有限公司(繁: 台灣積體電路製造股份有限公司)
英文社名 :Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.
本社所在地:No. 8, Li-Hsin Road 6 Hsinchu Science Park Hsinchu, 300 TWN
設立   :1987年2月
代表者  :Dr. C.C. Wei, Ph.D.
事業内容 :ファンドリー、半導体素子の製造・販売など
従業員数 :約6万5千人 (2021年)
資本金  :259,303,804,580 台湾ドル(2022年)

TSMCの概要

 台湾積体電路製造(正式名称:台湾積体電路製造股份有限公司, Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.)通称「TSMC」は、台湾に本社を置く世界最大の半導体受託製造企業(ファウンドリー)です。半導体の製造のみを行うファウンドリーの専業メーカーとして、世界各国のデバイスメーカーの半導体の製造を担っています。
 1987年、創業者であるモリス・チャン氏(張忠謀, Morris Chang)は、台湾政府からの要請を受けて業界初の専業ファウンドリであるTSMCを設立しました。当時の半導体産業は、1つの会社が設計から製造・販売までを一気通貫で手掛ける垂直統合型(Integrated Device Manufacturer, IDM)の生産体制が主流でした。しかし、このIDM体制においては半導体製造工場(ファブ)の建設に必要な設備投資が膨大であるため、回路設計・先進アーキテクチャなどの素晴らしいアイディアを持つエンジニア達のイノベーションを阻害していました。この問題点に着目したチャン氏は、チップの設計・販売と製造を切り離し、それぞれを専業にすること(水平分業化)で、それらの企業と半導体産業の両方を発展させることができると考えたのです。こうして、TSMCは水平分業の中で製造に特化したファウンドリーのパイオニアとして、現在主流となった半導体の水平分業のビジネスモデルの中心的な存在となりました。
 TSMCは2021年時点で535社の顧客を対象に291種の技術を用いた12,302個の製品を製造しています。その顧客にはQualcommやAMD・Nvidiaといった世界のロジックICメーカーが多数名を連ね、日本のソニーやルネサスも一部製品の製造を委託しています。また、その製造技術の高さから他のファウンドリーメーカーの追従を許しておらず、2021年度のファウンドリーの市場シェアの53%をTSMCだけで占めています。

2021年 ファウンドリー各社のマーケットシェア (TrendForceのプレスリリースをもとに筆者作成)

TSMCと日本の繋がり・関連企業について

 TSMCと日本の繋がりは1997年の日本法人設立から始まり、現在に至るまで様々な拠点を設立しています。拠点の名称と設立年度は以下の通りです。

1997年:日本法人であるTSMCジャパン株式会社を設立
2019年:TSMCジャパンデザインセンター並びにTSMCデザインテクノロジージャパン(株)を設立
2019年:東京大学と提携したシステムデザインセンター(通称:d.lab(ディーラボ))を設立
2021年:TSMCジャパン3DIC研究開発センターを設立
2021年:Japan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社を設立
2022年:TSMCジャパン株式会社の大阪拠点事務所を設立
2025年:東京大学とTSMC、ジョイントラボを開始 | 東京大学

 TSMCジャパンデザインセンターが担う役割について、同センター長を務める安井卓也氏は次のようにコメントしています。

TSMCデザインテクノロジージャパンは横浜みなとみらい地区にあり、2020年1月に設立しました。台湾本社および世界7拠点のデザインセンターとワンチームになって、5nmや3nm以降の最先端プロセスを利用されるお客様をサポートするのが役割です。具体的には、スタンダードセルやSRAMメモリー、最新自動配置配線ツールを用いたブロック設計、設計環境の構築を担い、設計プラットフォーム開発に貢献していきます。

出典:”誠実かつ信頼を理念に最先端プロセスを通じて顧客とマーケットを結ぶ”, 日経クロステック より

 また、システムデザインセンター(通称:d.lab(ディーラボ))のミッションについて、同拠点設立に伴う東京大学のニュースリリースにて次のように述べられています。

 特定領域に特化して無駄な回路を削ぎ落とした領域特化型専用チップは、汎用チップに 比べてエネルギー効率を桁違いに改善できます。世界の IT 企業が独自の半導体開発に乗り 出しているのは、このためです。システム全体をデザインし、これを先端的な半導体デバイ スに落とし込むことが必要です。
 しかしながら、領域特化型の専用チップの開発には、数百人がかりで 1 年以上かかるこ とも珍しくありません。したがって、チップの開発も従来の資本集約型から知識集約型に相 応しい仕組みに変革する必要があります。知識集約型のチップ設計手法を創出することが d.lab の重要なミッションです

出典:”東京大学・TSMC先進半導体アライアンス共同記者発表会”, 東京大学ニュースリリース より

 また、TSMCジャパン3DIC研究開発センターが担う役割について、同バイス・プレジデント センター長を務める江本裕氏は次のようにコメントしています。

TSMCジャパン3DIC研究開発センターは2021年3月の設立で、つくば市にある国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)の敷地内に研究室とクリーンルームを構えています。異なるプロセスノードの半導体チップ(チップレット)を三次元的に組み合わせて、高性能かつ高機能なSoCをコスト効率高く実現するための技術を開発するのがミッションです。機能性素材や要素技術を持った日本の企業とも連携しながら研究開発を進めています。

出典:”誠実かつ信頼を理念に最先端プロセスを通じて顧客とマーケットを結ぶ”, 日経クロステック より

 TSMCと東京大学のジョイントラボ、「TSMC東大ラボ」についてのコメント。

東京大学 総長 藤井輝夫
「困難な課題や急速な変化が人類を取り巻き、先の見通しが難しいこの時代にこそ、大 学は自らが持つ多様な分野の知を磨くだけでなく、学外の様々なセクターの方々とも協 力して、地球規模課題の解決に貢献し、未来を担う人材を共に育てていくべきであると 考えています。今後もTSMCとの連携を通じて、広く社会実装を見据えて、人類共通の 歴史的な課題にも積極的に取り組んで参りたいと思います。 」

TSMC Executive Vice President 兼共同 COO Y.J. Mii
「TSMC 東大ラボは、2019 年に開始した全学・全社レベルでの産学連携の成功を基に設 立され、これまでの協力関係から、より緊密なパートナーシップへと花開いたものです。 TSMC と東京大学はそれぞれの分野で世界をリードする存在であり、当ラボが半導体分 野における知見の限界を広げ、将来を担う人材を育成する広範かつ長期的な協力関係の ハブとなることを期待しています。」

出典:東京大学とTSMC、ジョイントラボを開始 | 東京大学 2025年6月12日

 このように、TSMCは多様な目的のもとで日本に複数の拠点を設立しています。

JASM設立の経緯

日本政府によるTSMCの誘致

 現代の私たちの生活は、AI、ロボット、スマートフォン、PC、クラウドといったデジタルサービスや産業に支えられています。このような社会において、半導体はその心臓ともいえる基幹部品です。
 近年の様々な要因によって発生した半導体不足は、半導体を使用する産業の製造に大きな影響を与えました。このことから、半導体の安定的な調達が課題となりました。加えて、国家間の対立を背景に、幅広い産業分野で必要不可欠な半導体の戦略的物質としての重要性が増しており、経済安全保障の観点から、国内の半導体サプライチェーンの強靭化が求められるようになりました。
 半導体のサプライチェーンは、主に製造装置・素材・デバイス産業から構成されています。日本はこの中で製造装置・素材産業において強みを有しており、高い世界シェアを誇っています。一方で、デバイスに関してはメモリ・センサ・パワー等で世界市場で戦えるプレーヤーが国内に残っているもしくは外資企業がすでに国内に製造拠点を有しているものの、ロジック半導体の製造技術で後れを取っています。日本の持つロジック半導体の製造技術の多くは40nmプロセス以前の技術であり、20nm台以降の先端ロジック半導体を製造する能力を有していません。つまり、日本国内の半導体産業において欠けている先端ロジック半導体の製造基盤を補うことで、サプライチェーンの強靭化につなげることができます。
 ただし、先端半導体の製造には専用の装置だけでなく製造プロセスのノウハウが必要であり、このノウハウの構築にはかなりの時間を必要とします。そこで、先端ロジック半導体で既に成熟した製造技術やノウハウを有するTSMCを国の補助のもとで誘致することとなったのです。

日本政府・経済産業省・NEDOによる支援

認定特定半導体生産施設整備等計画;経済産業省

特定半導体生産施設整備等助成業務 | 事業 | NEDO

認定特定半導体生産施設整備等計画 (METI/経済産業省)

 「認定特定半導体生産施設整備等計画」は、特定半導体を生産する認定事業者への助成金の交付等の新措置を講じることを目的として、経済産業大臣が制定したものです。特定半導体としてはロジック半導体とメモリ半導体が該当し、具体的に以下のような条件が設定されています。また、認定を受ける計画については、10年以上の継続した生産や需要ひっ迫の際の増産が求められることとなっています。

出典:”特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(特定半導体生産施設整備等関係)”, 経済産業省ホームページより

第一工場に対する支援

  • 認定日:令和4年6月17日
  • 特定半導体生産施設整備等計画認定番号:2022半経第001号-1
  • 事業者名:
    Japan Advanced Semiconductor Manufacturing 株式会社
    台湾セミコンダクター マニュファクチャリング カンパニー リミテッド
  • 特定半導体生産施設整備を行うために必要な資金の額:
    86億ドル規模
  • 最大助成額:4760億円
  • 事業実施期間:
    (投資着手~操業開始)令和4年1月~令和6年12月(徐々に整備を完了して生産を開始)
  • 特定半導体生産施設整備等計画の下での事業実施期間:
    (初回出荷~継続生産)2024年12月(徐々に整備を完了して生産を開始)~10年以上の継続生産を予定
  • 製品の納入先に関する説明:日本の顧客が中心
  • 特定半導体生産施設整備の内容
    ・施設の所在地:熊本県菊陽郡菊陽町、土地の所有権はJASM
    ・敷地面積:約21.3万㎡、建設面積:約7.2万㎡
    ・主要製品:ロジック半導体(22/28nmプロセス・12/16nmプロセス)
    ・生産能力:5.5万枚/月(12インチ換算)
    ・総従業員数:1,700名

第二工場に対する支援

  • 認定日:令和6年2月24日
  • 特定半導体生産施設整備等計画認定番号:2023半経第003号-1
  • 事業者名:
    Japan Advanced Semiconductor Manufacturing 株式会社
    台湾セミコンダクター マニュファクチャリング カンパニー リミテッド
  • 特定半導体生産施設整備を行うために必要な資金の額:
    139 億ドル規模(40nmを除いた金額は122億ドル規模)
  • 最大助成額:7320億円
  • 事業実施期間:
    (投資着手~操業開始)令和6年2月~令和11年12月
  • 特定半導体生産施設整備等計画の下での事業実施期間:
    (初回出荷)令和9年第4四半期 (JASMの会計年度は1月から12月)
    (継続生産)令和11年12月~10年以上の継続生産を予定
  • 製品の納入先に関する説明:日本の顧客が中心
  • 特定半導体生産施設整備の内容
    ・施設の所在地:熊本県(具体的な場所は今後決定)
    ・敷地面積:約32.1万㎡、建設面積:約8.8万㎡
    ・主要製品:ロジック半導体(12nm・6nmプロセス)
    (別途国内需要を鑑み、同工場では40nmプロセスも製造)
    ・生産能力:4.8万枚/月(12インチ換算) ※工場全体では6.3万枚/月(12インチ換算)
    ・総従業員数:約1,700名

株主構成と少数株主の出資

JASMの株主構成

第一工場の建設が発表された段階では、TSMCは約70%、SSSは約20%、デンソーは約10%のJASM出資比率となっていました。

第二工場の建設が発表された段階では、TSMCは約86.5%、SSSは約6.0%、デンソーは約5.5%、トヨタは約2.0%のJASM株式を保有することになります。
出典:熊本におけるJASM第二工場の建設について | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

ソニーの出資とねらい

 2022年02月15日、TSMC・ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)は連名で、JASMに対して約5億米ドル(約570億円*)を資本金として出資することにより、20%未満の株式を取得することを発表しました。当発表に際し、SSS社長兼CEOを務める清水照士氏は次のようにコメントしました。

世界的な半導体不足が続く中、今回のTSMCとのパートナーシップが、当社だけではなく、産業界全体のロジックウェーハの安定調達に寄与することを期待します。世界最先端の半導体生産技術を持つTSMCとのパートナーシップをより一層強め、深めていくことは、ソニーグループにとって大いに意義があるものと考えています。

出典:”TSMCによる半導体ファウンドリの日本での設立と、ソニーセミコンダクタソリューションズによる少数持分出資について”, ソニーセミコンダクタソリューションズグループ ニュースリリース より

 JASMへの出資の目的としてSSSの清水氏は、「ロジック半導体の安定調達」「TSMCとの技術連携強化」「日本国内のサプライチェーン強化への貢献」の3点を挙げています。
 SSSの主力製品である積層型CMOSイメージセンサー(以下、CIS)は、光をとらえ電気信号に変える画素部と電気信号をデジタル情報に変換して情報処理する論理回路部が2層に分かれています。このうち、下層のロジックICは自社の山形工場でも生産しているものの、その大部分を外部から調達しており、この安定的な確保を重要な経営課題に位置付けていました。JASMへの出資および製造により、「ロジック半導体の安定調達」という課題を解決する狙いがあるものと思われます。

出典:”積層型CMOSイメージセンサーの生みの親が語る、世紀の発明を支えた論理的思考”, ソニーセミコンダクタソリューションズグループ より

ソニーのJASMを通じた半導体の安定確保については、ソニー側の資料においても説明されています。

出典:Sony Business Segment Meeting 2023 All Materials_J

第二工場の建設が発表された段階では、ソニーは約6.0%のJASM株式を保有しているとされています。

デンソーの出資とねらい

 2022年02月15日、TSMC・ソニーセミコンダクタソリューションズ・デンソーは連名で、JASMに対してデンソーが約3.5億米ドル(約400億円*)の少数持分出資を行うことを発表しました。この出資により、デンソーはJASMの10%超の株式を取得しました。当発表に際し、デンソーの代表取締役を務める氏は次のようにコメントしました。

自動運転や電動化といったモビリティのテクノロジー進化の中で、半導体は自動車業界においてますます重要になっています。今回のTSMCとのパートナーシップにより、車載半導体の中長期的な安定調達を実現し、自動車産業全体に貢献していきたいと考えています。

出典:”デンソーによる、JASMへの少数持分出資について”, 株式会社デンソーニュースリリース より

DENSOのJASMを通じた28nmマイコンの調達については、DENSOの半導体事業説明会資料に置いて言及されています。

出典:DENSO半導体事業説明会

第二工場の建設が発表された段階では、デンソーは約5.5%のJASM株式を保有しているとされています。

トヨタ自動車による出資

第二工場の建設が発表された段階では、トヨタは約2.0%のJASM株式を保有しているとされています。

熊本におけるJASM第二工場の建設について | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

40nmプロセスの顧客 ①Analog Devices, Inc.

Analog Devices, Inc.は2024年2月22日、TSMC社と、熊本県に本社を置くTSMCの過半数所有製造子会社であるジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチャリング株式会社(以下「JASM」)を通じて、長期的なウェーハ生産能力の供給に関する特別契約を締結したことを発表。
ワイヤレスBMS(wBMS)やギガビット・マルチメディア・シリアル・リンク(GMSL™)といった、事業全体の重要なプラットフォームを支えるファインピッチ技術ノードの生産能力をADIがさらに確保することを目的としている。

Analog Devices Strengthens Capacity and Resiliency Through Expanded Partnership with TSMC | Analog Devices

40nmプロセスの顧客 ②Microchip Technology inc.

Microchip Technology Inc.は2024年4月9日、TSMCとのパートナーシップを拡大 し、TSMCが株式の過半数を保有するJapan Advanced Semiconductor Manufacturing株式会社(JASM)(熊本 県熊本市)において、40nmに特化した製造能力を実現することを発表。
JASMからのウェハー供給能力により、Microchip社は、自動車、産業、ネットワーク用途を含む様々な市場において、世界中の幅広い顧客にサービスを提供する能力をさらに強化するとしている。

Microsoft Word – 1SÇŽ Microchip> J Sý ýł7 n_†TSMC>hnÐ:™á’

九州・熊本県への影響

九州シリコンアイランド

 九州地域においては、1960年代以降に半導体企業による工場立地が進み「シリコンアイランド」と呼ばれるようになりました。現在は日本の半導体企業の3分の1以上が集積しています。

出典:”シリコンアイランド九州の復活に向けて~2030年の日本社会を支える九州であり続けるために~”, 九州産業局 より

熊本県と半導体産業

 新工場が建設される熊本県には、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングや東京エレクトロン、および半導体の関連企業が集積しています。また、半導体製造には水の存在が必要不可欠となりますが、熊本は水資源が豊富であるため半導体企業が集積する要因の一つとなっています。

出典:熊本企業立地ガイド/熊本県産業集積マップ より
出典:熊本企業立地ガイド/熊本県産業集積マップ より

経済効果と周辺地域の活性化

 熊本の肥後銀行などを傘下に収める九州フィナンシャル・グループは、JASM設立と関連企業の熊本進出などに伴う熊本県内の経済波及効果の試算を行いました。その試算によると、操業開始後の2025年から5年間で約2・4兆円、2022年から2031年までの10年間でその効果は約4.3兆円に上るとみられています。また、熊本県の県内総生産額への影響額は毎年2000億円程度となり、3%ほどの成長の底上げ効果が期待されています。
 また、2022年7月1日に国税庁が発表した2022年の路線価によると、熊本県菊陽町では「光の森3丁目県道住吉熊本線」の評価基準額が前年比5.0%上昇したとのことです。

関連企業の設備増強・熊本県進出

 JASMの設立に伴い、関連企業の設備増強や熊本県への進出・工場設立が相次いでいます。以下の表に、現時点で報道された関連企業の一部の動きをまとめました。ここに掲載した企業のほかにも複数の企業が設備増強や熊本への進出を決めているそうです。

各記事をもとに筆者作成

おわりに

 本記事の内容は、誤りなどが見つかり次第適宜修正をしていくつもりです。特に、日本政府によるTSMC誘致の項に関しては私自身の認識の誤りがある場合がございます。
 最後までご覧いただきありがとうございました。

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【参考】

【JASMの基本情報】

【親会社のTSMCについて】

【JASM設立の経緯】

【九州・熊本県への影響】

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