なぜ #レーザーテック (6920) は強いのか EUV露光向けマスク検査装置の観点から解説

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はじめに

 今回は、皆さんが大好きなレーザーテック株式会社(証券コード:6920)について、「なぜレーザーテックは強いのか」と題して、EUV露光向けフォトマスク検査装置の観点から解説してみました。
 想定読者は、レーザーテックや半導体のことをよくわからないまま何となくデイトレードの対象にしている人です。半導体とは何かから始まり、レーザーテックが製造しているものとその強みについて、できるだけわかりやすく解説したつもりです。
 ぜひ最後までご覧ください!

*本文は、以前Xにて、卓球の水谷隼さん(@Mizutani__Jun)のツイートに対して技術的な観点からガチ解説してみようと思って書きなぐったものをそのまま載せています。
↓その時のポスト↓
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解説のステップ

 なぜレーザーテックが強いのか?この質問に対する端的な答えは、「高付加価値な半導体を作るための高付加価値な工程で使われる高付加価値&オンリーワンな検査装置を製造しているから。」です。
  さらに詳細にレーザーテックの強さについて理解するには、以下のステップを踏むとわかりやすいです。

0. レーザーテックが作っているもの
1. 半導体とは・ロジック半導体とは
2. 半導体の製造プロセス・フォトリソグラフィー工程とは
3. 半導体の微細化とEUV露光
4. EUV露光向けの特殊なフォトマスク
5. レーザーテックの強みとは

レーザーテックが作っているもの

 レーザーテックが製造している物は、「半導体の製造で使われるフォトマスクという部材を検査するための装置」です。中でも強みを持つのが、最先端ロジック半導体の製造で主に使われるEUV露光向けの特殊なフォトマスクの検査装置です。

 キーワードは、半導体フォトマスクEUV露光検査装置、です。これらのキーワードに沿って順に説明します。

半導体とは・ロジック半導体とは

(1枚目の図を参照ください)

 「半導体」とは、導体(電気を通す物質)と絶縁体(電気を通さない物質)の中間の性質をもつ物質を 使って作られる電子部品の総称です。1枚目の図から分かるように、その種類は多岐にわたっています。その中でも、ロジック半導体は人間の頭脳のような存在で、信号を処理したり計算を行う役割を担う半導体です。スマホやPCの性能はこのロジック半導体の性能に左右されるといっても過言ではありません。

 ロジック半導体の性能は、その回路の線の幅で主に語られます。回路の線幅が狭ければ狭いほど、処理速度が向上し、性能向上につながります。即ち、これが付加価値の向上につながるわけです。

半導体の製造プロセス・露光工程とは

(2枚目の図を参照ください)

 半導体は、図に示すような複数の工程を経て製造されます。この中でも、先述の回路の線幅に関わってくるのが、「フォトマスク製造工程」と「露光工程」です。

 フォトマスクとは、回路をウェーハに焼き付けるための原版のようなものです。設計された回路図をガラスの板(マスクブランクス)に描画することで作られます。 このフォトマスクに光源から出た光(紫外線)を当てて、フォトマスクに描かれた回路をウェーハ上に転写するのが露光工程です。ここでウェーハ上に転写された回路が、半導体の性能を左右します。

半導体の微細化とEUV露光

(2枚目の図を参照ください)

 (1)で述べた通り、ロジック半導体の性能はその回路線幅に依存します。この回路線幅は、(2)で述べた露光工程に依存します。この露光工程で微細な回路を転写するには、光源の紫外線の波長を短くする必要があります。図の右下に示すように、回路の微細化の需要に伴って、露光装置の光源の波長もだんだん短くなっていきました。

 そして現在は、回路線幅が1桁ナノメートルのロジック半導体が製造されています。このような超微細な半導体を製造するのに必要不可欠なのが、波長13.5nmの極端紫外線(EUV)なのです。

EUV露光向けの特殊なフォトマスク

(3枚目の図を参照ください)

 (2)で述べたように、露光工程では、回路を転写するために「フォトマスク」という部材を使用します。EUV露光が登場する以前は、このフォトマスクは構造や転写方法が概ね似ていました。しかし、EUV露光で使われるフォトマスクは、従来の物とは構造も転写方法も異なるものになります。 そして、このEUV向けフォトマスクでは、数多くの欠陥(異常)が発生します。この欠陥を無視したまま露光を行うと、回路に異常が生じ、最終的な半導体の品質異常につながります。つまり、この欠陥の有無を検査・修正して、回路の異常を未然に防ぐことが重要になります。 ただし、先述のとおり、EUV露光向けのフォトマスクは従来のものと全く異なるため、その検査には高度な技術が要求されます。この技術は数年で確立できるものではなく、長年の研究開発が必要なものです。レーザーテックは、日本の国家プロジェクトの一環として10年以上、この検査技術の確立に取り組んできました。この検査技術をもつのは世界でレーザーテックのみです。

レーザーテックの強みとは

(4枚目の図を参照ください)

 (4)で述べたように、EUV露光向けフォトマスクには数多くの欠陥が存在し、この欠陥に対して事前に検査することが必要不可欠です。レーザーテックは、これらすべての欠陥に対応した検査装置を製造しています。 そして、この検査技術は国家プロジェクトの一環として、10年以上の歳月を経て確立されたものであり、その技術的な難易度の高さから、他の企業が容易に真似ることは不可能です。これが高い参入障壁となっています。 また、レーザーテックのみが持つ技術であることから、「EUV露光向けフォトマスクの検査装置=レーザーテック製」と言えます。つまり、レーザーテックの製品は半導体製造におけるデファクトスタンダードになっています。

業績推移

出所:バフェットコード

フォトマスクとは

 フォトマスクとは、半導体製造におけるフォトリソグラフィ工程において使用される部材です。表面の遮光膜に微細な回路パターンを描写(エッチング)した透明なガラス板で、設計した回路をシリコンウェハに焼き付けるときの原版になります。半導体デバイスの性能に直結する工程で使用されるため、高いパターン寸法精度はもちろん、わずかなパターン欠陥や極小の異物付着さえも許されない高度な品質管理が要求されます。
 回路線幅が大きいものでは1:1のサイズで露光されますが、近年では回路の微細化が進み、ステッパーによりウェハ上を移動しながら4-5倍の大きさで作成されたフォトマスクでの縮小投影による露光が主流となっています。このような先端半導体製造に使用されるフォトマスクは、等倍のものと区別して「レチクル」と呼ばれています。

 フォトマスクは、以下のような複数工程を経て製造されます。

1.低膨張ガラス基板の表面に、ピュアクロムと酸化クロムからなる遮光膜を積層し、フォトマスクの原料となるフォトマスクブランクスを作製する。
2.フォトマスクブランクス上にレジスト(感光材)をコータ・デベロッパーを用いて均一に塗布する。
3.電子ビーム描画装置を用いて、設計データをもとに回路パターンを描画する。
4.電子ビームによって露光されたレジストを除去する。
5.レジストが除去された部分のクロム膜をエッチングにより除去します。
6.不要になったレジストを除去し、洗浄する。ガラス基板上にパターニングされたクロム遮光膜のみが残った状態になる。
7.各種検査装置による検査を経て出荷。必要に応じてペリクル(フォトマスク用の防塵フィルム)の貼り付けを行う。

 フォトマスクに関連する企業・銘柄は以下の記事にまとめています。

参考資料

レーザーテック株式会社|リンク

レーザーテック株式会社 EUVマスク関連検査装置ラインアップ|リンク

“極端紫外線(EUV)を利⽤した次世代のマスクブランクス検査技術を確⽴ レーザーテック株式会社”, NEDO, 2018年8月|リンク

バフェットコード レーザーテック【6920】|リンク

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