はじめに
この記事では、新たに設立が発表された次世代半導体会社「Rapidus株式会社(読み:ラピダス)」の記者会見の内容についてまとめました。ラピダスの概要や設立経緯、質疑応答の内容をまとめています。ぜひ最後までご覧ください。
会見の概要
【開催日時】
2022年11月11日16時00分~
【会見構成】
20分:会社側からの説明
40分:質疑応答
5分:フォトセッション
【登壇者】
・取締役会長 東哲郎
・代表取締役社長 小池淳義
公式サイト
会見動画
会社側からの説明
会社概要
社名:Rapidus株式会社(英文名:Rapidus Corporation)
所在地:〒102-0083 東京都千代田区麴町4丁目1番地麴町ダイヤモンドビル11階(現在設置中)
設立日:2022年8月10日
資本金:73億4600万円(2022年11月時点。資本準備金を含む)
決算期末:12月31日
主な事業内容
・半導体素子、集積回路等の電子部品の研究、開発、設計、製造及び販売
・環境に配慮した省エネルギーの半導体および半導体製造技術の研究、開発
・半導体産業を担う人材の育成、開発
主要役員
取締役会長:東 哲郎
代表取締役社長:小池 淳義
監査役:山戸 康彦
社外取締役:小林 喜光、西 義雄、小柴 満信、松尾 眞
資本構成
【株主・出資者】
設立者
(経営株主(東哲郎、小池淳義)
+創業個人株主12名)
+出資企業8社
【出資企業】総額73億円
キオクシア株式会社(10億円)
ソニーグループ株式会社(10億円)
ソフトバンク株式会社(10億円)
株式会社デンソー(10億円)
トヨタ自動車株式会社(10億円)
日本電気株式会社(10億円)
日本電信電話株式会社(10億円)
株式会社三菱UFJ銀行(3億円)
プロジェクトの進め方
「ポスト5G基金事業における次世代半導体の研究開発プロジェクト」に採択
開発テーマ:日米連携に基づく2nm世代半導体の集積化技術と短TAT製造技術の研究開発
【技術開発の内容】
- 米国IBM社他と連携して2nm世代のロジック半導体の技術開発を行い、国内短TATパイロットラインの構築と、テストチップによる実証を行っていく。
- 2022年度は、2nm世代の要素技術を獲得、EUV露光機の導入着手、短TAT生産システムに必要な装置、搬送システム、生産管理システムの仕様を策定し、パイロットラインの初期設計を実施する(開発費:700億円 )。
- 研究期間終了後は、その成果をもとに先端ロジックファウンドリとして事業化を目指す。
設立背景と中長期の事業展開構想
以下の0~5が当社の設立経緯の流れとなっており、0~3が設立背景、4~5が中長期の事業展開構想となっています。
0. 半導体の重要性と日本半導体産業の凋落に対する懸念の高まり
1. 半導体の「経済安全保障」が喫緊の課題であり、多くのファウンドリが台湾と中国に局在していることからサプライチェーンリスクが高い
2. 2030年代には自動運転自動車・AI向けの用途の拡大が見込まれ、完成品における半導体の付加価値がより一層高まる中、国内での内製化を実現することが必要
3. この実現には戦略的な日米連携が必要
4. 日米欧連携で次世代技術(3次元LSI・ナノシートGAA)の確立を目指す。国内外の素材・装置産業との協力体制も構築する。従来の閉塞的な国内のみの連携を脱却し、国外企業との連携を進める。
5. 2nm世代の最先端LSIファウンドリを見本で実現させる。
経営理念と経営方針
【経営理念】
半導体を通して人々を幸せに、豊かに、充実したものにするために
1. 世界最高水準の開発力、技術力、製造力を持つ工場経営を推進する
2. 多くの大学、研究機関を連携しこの分野を拡大していく人材育成を核とする
3. 真のグリーン化に向けてイノヴェーションを推進する
【経営方針】
1. 新産業創出を顧客とともに推進する
2. 設計、ウェーハ工程、3Dパッケージまで世界一のサイクルタイム短縮サービスを開発し提供する
3. 世界最高水準の設計部隊、設備メーカー、材料メーカーと協調し、新たなビジネススキームを構築する
追加情報
・社名の由来:英語のrapidのラテン語、意味は「素早く動く」
・数年前から事業家計画を練っていた
質疑応答
以下では、質疑応答セッションの内容をまとめています。質問とその回答については、内容に齟齬が生じない範囲で表現を変えておりますので、この点は予めご了承ください。
【日経新聞】
Q:企業活動で必要となる「人・モノ・金」をどのような方法・スケジュールで調達するのか
A:日米連携、特にIBMとの連携を軸にして2nm技術をはじめとした最先端技術の勉強から始める。現時点でも数名が参画している。世界に出て行った人材をもう一度日本に集約し、大学と連携して若い人材を育成し、40・50代やシニアの人材も活用し、全世界からの人材獲得を目指す。資金面は、企業8社の出資金や政府からの補助金をもとに最初の5年間の開発に着手し、その後5年間でビジネスを展開していく。
Q:人材はソニーなどからの出向か
A:必ずしもそうとは限らない。新会社として採用を進める。希望する出資会社の意向があれば出向という形もあり得る。
Q:今回NEDOと経済産業省から700億円の補助が決定したが、今後も国からの大規模な援助を期待しているのか
A:これから経産省と議論する。
【テレビ東京】
Q:トヨタをはじめ8社が出資をしているが、一部ではこの8社が主体的に設立したものという印象もある。実際にこの出資はどのように集めたのか。
A:10~20年後を見越して検討を進めてきた中で、国の公募を活用して展開していく。この考えに賛同する企業をあたっていく中で先述の8社による出資が決定した。また、定期的に開催されていた政府主導の戦略会議に大手電機メーカーや関連企業のトップを招いていた中で、ラピダスの設立が決定した段階で8社に声をかけ、出資を決めてもらった。
Q:ラピダス設立にあたっての意気込み・覚悟・勝算について
A:半導体産業は長期的には確実に成長していく中で、シリコンサイクルに負けないための経営者としての長期的なビジョンと戦略を持って事業を進めていく。また、過去の反省を踏まえ、官民一体の技術開発体制の拡充を進めると共に、国内のベースとなる半導体技術を軸に世界との連携を深めていく。
【TBS】
Q:過去のエルピーダの失敗をどのように分析し、今回のラピダスにどのように生かしていくか。
A:旧エルピーダは現在のマイクロンとして先端のDRAMの生産を続けており、多くの日本人技術者が活躍していることから、「失敗」という言葉は不適切ではないか。
Q:社名の由来について詳しく
A:ラピダスという社名は小池社長が考案した。トレセンティという世界初の300mmファウンドリを設立した経緯があり、この社名は300を意味するラテン語が由来となった。どこよりも早く作るということを目標に掲げる中で、「素早く動く」を意味するラテン語のRapidusを社名とした。
【NHK】
Q:単なるファウンドリではない ビジネスモデルの構想について
A:TSMCのようなファウンドリモデルを学びつつもその先を行くようなビジネスモデルを構想している。顧客との連携を密に取りながら、要望実現を最短でできるような仕組みや構造をさらに強化したビジネスモデルの構築を目指す。
Q:経営方針の「世界最高水準の設計部隊との協調」とは具体的にどことの連携か
A:日米連携で進めていく。特にアメリカのシリコンバレーのハイパフォーマンスコンピューティングを作っている部隊、具体的にはIBMとも連携するかもしれない。常に最終製品を見据えながら連携を強化していく。
【ブルームバーグ】
Q:5年後をめどにTSMC基準の2nm製品の量産を目指している、という認識でいいか
A:TSMC基準という定義は難しいが、第一段階として最初の5年間(2027年まで)で2nm製品の生産に結び付ける技術の確立を目指す。
Q:生産する2nm製品はどの企業がどういった用途で活用することを想定しているか
A:クラウドコンピューティングやレベル5自動運転自動車向けを想定している。
【?聞き取れませんでした】
Q:出資企業がこれから増えることはあるか。装置・材料メーカーの出資もありえるか
A:装置・材料メーカーは出資という形態ではなく技術的なパートナーシップを個別に結ぶ形態をとる。
Q:東京大学のd-labをはじめとした大学の研究拠点との連携はあるか
A:国内の様々な大学と連携を取り、人材育成や基礎技術研究を進めていく。
【日刊工業新聞】
Q:目指す会社の規模とどのようにそれを目指すのか
A:TSMCやサムスンの規模感を追いかけることはしない。別の要素で差別化を図る。先端品の開発を回転させ、顧客の最終製品を見据えた高付加価値な製品の製造を目指す。
【ダイヤモンド社】
Q:会社設立の経緯についてより詳しく
A:以前から勉強会を開催していた。メンバーの入れ替わりはあったものの、多様な年代の有志と共に事業構想を練っていた。
【東洋経済】
Q:設立に携わった12人の有志の氏名は公表しないのか
A:この段階では公表しない。
Q:日本の半導体産業の凋落は何が問題で今後何が必要になるか。お金か国のサポートか。
A:追加の補助金については国に対して要望を出してはいるものの、予算次第なので実現の是非はわからない。経産省や政治家も補助金の必要性は認識している。凋落の原因の一つは、世界一を目指そうとする経営者が日本にいなかったことだと考える。ラピダスではある特定領域向けの用途で世界一を目指すことを念頭に置いている。日の丸連合だけでは勝てないので、世界との連携を進める必要がある。
【日本経済新聞】
Q:国外の企業や研究機関との連携は、LSTCを通すのか、ラピダスが直接行うのか。
A:事業内容によっていずれの場合もあり得る
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