【#半導体のお勉強】単結晶シリコンインゴット製造におけるMCZ法(Magnetic field applied Czochralski法)について:CZ法との比較

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Xでの疑問

CZ法による単結晶シリコンインゴットの製造方法

 半導体の原料となるシリコンウェーハは、円柱状の単結晶シリコンインゴットをスライスして製造される。その単結晶シリコンインゴットの製造プロセスは以下の通り。ここでは、シリコンウェーハ製造大手の株式会社SUMCOのサイトを引用する。

 まず、原料となる高純度多結晶シリコンを石英るつぼに入れてヒーターで加熱溶解させる。その溶融シリコンに種結晶を接触させ、回転させながら引き上げることで徐々に径の大きい円柱状のインゴットとなる。

出典:株式会社SUMCO シリコンウェーハの製造方法[単結晶引上工程] | 株式会社SUMCO (sumcosi.com)

シリコンウェーハ・インゴットの大口径化にあたっての課題

 従来の8インチ(200mm)から12インチ(300mm) / 16インチ(400mm) へのシリコンウェーハの大口径化にあたって、CZ法によるインゴット製造において次のような課題が生じた。
 CZ法では、成長させる結晶直径の2~3倍の直径の石英るつぼを使用し、その中に多量の多結晶シリコンを充填させる。この石英るつぼの周囲を加熱させることで中の多結晶シリコンを溶解させるが、ウェーハ大口径化に伴ってるつぼの径も大きくなり、それに伴って加熱の際の内外での温度差が大きくなる。この温度差によって内部で融液の対流が発生し、融液温度の不安定化を招いて単結晶化が難しくなる。
 加えて、大きな対流による石英るつぼと溶融シリコンの接触面積の増加により、石英壁面から溶融シリコンへの酸素供給が増え、シリコン中の酸素濃度が増大する。これがシリコンウェーハやその後のデバイス特性に影響を及ぼす。
 以上のことから、単結晶インゴット引き上げ時の溶液中の対流抑制が重要となってくる。

溶融シリコンの対流抑制策としてのMCZ法

シリコン溶液は導電性が高い→磁界中で運動する場合にはローレンツ力が作用し、運動が抑制される。
・どのような方向の磁界を印加するかによって抑制される対流モードが異なる。
・磁界の印加方法は以下の2種類だが、基本的には後者の静磁界の印加が主流
 ①三相交流を供給する加熱による導電性融液の誘電回転効果を利用
 ②単結晶引き上げ装置の周囲に磁界発生装置を配置し静磁界を印加

・静磁界を印加する方法によって以下の3種類に分類
①HMCZ:横磁界型
②VMCZ:縦磁界型
③Cups MCZ

現在は①HMCZ:横磁界型と③Cups MCZが主に使用されており、磁場を印加する超電導マグネットの製造メーカー各社もこの2種類に対応した製品を取り揃えている。

単結晶シリコンウエハー引上げ装置用超電導マグネット:原子力 | 特集・トピックス | 東芝エネルギーシステムズ (global.toshiba)

MCZ(単結晶引上げ装置)用超電導マグネット | 株式会社TMEIC

MCZ用超電導マグネット | 産業用装置 | 住友重機械工業株式会社 産業機器事業部 (shi.co.jp)

参考文献

シリコンウェーハの製造方法[単結晶引上工程] | 株式会社SUMCO (sumcosi.com)

飯野栄一, “シリコン単結晶成長における磁界の利用”, 電学誌,119巻4号,1999年|リンク

小野通隆, 前田秀明, “半導体単結晶引 き上げ装置 高温超電導 コイルの開発動向”, 電学誌,120巻4号,2000年|リンク

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